私が経験したツワリは、妊娠初期の二カ月ぐらいから始まりました。

まず、歯磨きができなくなりました。歯磨き粉の匂いが強烈で、歯ブラシが口に入ることも気持ち悪く、口にした途端、身体が異物だと反応し、えずいてしまいます。仕方なく、ツワリがある程度おさまるまでは、うがいだけですませました。しかし、身体が通常以上に清潔を求めるようになっていたので、歯磨きができないというは、不快でした。

夫には、申し訳ないですが、夫が着ていた服を洗うのにも匂いが気になり苦労しました。その時期は、まるで、夫自体が汚いものであるかのような気持ちになったものです。普段、夫は、無臭なのですが、いつもは感じない夫の体臭がなぜか気になったのもこの頃です。そばに夫が近づいてくるだけで、気持ち悪くなってしまうのです。夫本人には言えないので、ひたすら耐えるしかありませんでした。

また、食べ物を見るだけで気持ちが悪くなり、スーパーへ買い物に行くのにも苦労しました。特にお肉コーナーでパックにつまって陳列されている肉を見ているだけで、吐き気をもよおしトイレに駆け込んだこともあります。しかし、夫の食事は作らねばなりません。食事を楽しみにしている夫は、常に「お腹すいた、何食べる?」と聞いてきます。夫としては、それが普通なのですが、妊婦は通常の状態ではありません。自分が食べたくないのに、食事を作らないといけないのも辛かったです。

妊娠四カ月頃ぐらいから、「吐きヅワリ」ではなく、空腹だと気持ち悪くなる「食べヅワリ」にチェンジして行きました。

食べヅワリは、気持ち悪くなった時に、何か食べ物を口にすれば、楽になります。吐きヅワリよりも気持ちが楽になり、食欲も出てきたのがこの時期です。急に体重が増加し始めたので、産婦人科では、あまり太らないようにと注意を受けました。

しかし、無性にアイスクリームが食べたくなり、アイスクリームがないと我慢できないので、アイスクリームのパックを常に常備していました。また、バターと砂糖たっぷりのパウンドケーキが食べたくなり、毎日のように自分で作っては、空腹になるとつまむということを繰り返していました。

また、食べヅワリは、日中だけではありません。夜に床に入っていると、気持ち悪くなって眠れません。寝付いても気持ち悪くなり起きてしまうことが度々ありました。そんな時は、買い置きしておいたバナナを夜中に起きだしてひとり暗闇で食べていました。私がいないことに気づき起きてきた夫に、「何してるの?」と驚かれたこともあります。

この頃から、妊婦は通常の感覚とは違うものだと夫の理解力も深まり、協力的になっていったと思います。

お腹の大きさも目立ち始めたので、夫にも「赤ちゃんがいる」ということが実感できてきたのだと思います。

今、冷静になってみると、おかしいぐらい食べており、異常なことがわかりますが、その時は、そうしないと落ち着かなかったのです。五カ月~六カ月の安定期に入って、嘘のようにツワリがおさまり、妊婦じゃない身体に戻ったような開放感を味わうことができました。独身の女友達と京都に旅行にも出かけました。

ツワリは個人差があると聞きます。私は、ツワリで入院することもなく他のツワリに苦しむ妊婦さんに比べれば、楽な方であったのかもしれません。しかし不思議なのは、今振り返ってみても、ツワリで苦しんだ記憶があるのは一人目を妊娠した時だけです。二人目、三人目の妊娠となると、上の子がいるので、のんびり妊婦ライフが送ることができません。気持ちの持ちようと慣れという影響もあるのかもしれません。